まさか平凡な私にこんな事が起きるなんて
さっきまで、すごく遠く感じた彼が
今こんなに近くにいる
私は、今、彼に後ろから抱き締められている
「さっき……触れられなかった事、俺の方が落ち込んでるみたい」
その言葉に私は驚いた
硬直した私を彼が彼自身の方に向かせると
彼は彼自身の手を私の肩と背中に置きながら
「ごめんね、ビックリしたよね
けど、今を逃したら、もう会えなくなると思ったら、思わず……」
私は、咄嗟の事でどうしたら良いか分からず何も言えずにいると
彼は折り畳んである紙を、さっき緊張で握手を拒んだ私の手に握らせてきた
「よかったら連絡して」
そう言って彼は私の背の高さに合わせて屈んで私の頭を撫でた
「それじゃ……」
そういうと彼は去っていった
私は彼が握らせてくれた連絡先を見つめて
ここに至るまでの記憶を辿った