第1話 ナタリー

スキー場の雪崩事故で瀕死の重傷を負ったベストセラー作家のサイモン・クリスティ。彼の愛読者のナタリーに助けられて、一命をとりとめるが、彼女の正体は――。


 それは一瞬の出来事だった。サイモン・クリスティはたった独りで、カリフォルニア州のスキー場でスノーボードに興じていた頃、とつぜん雪崩に襲われた。不慮の事故だ。氷点下三〇度を下回った怪物は、彼に悲鳴すらあげる間も与えず、からだじゅうをのみこんだ。

 朦朧とするなか、音だけがあった。
 猛吹雪が風を切り裂く音。
 スコップで雪を掘る音。

 数分後、小柄な女が雪の下に埋まったサイモン・クリスティを発見すると、彼の頬をバシバシ叩き、手際よく人工呼吸を繰りかえした。

「さあ呼吸するのよ!」女がわめき声をあげる。「呼吸をしなさいったら!」
「げほっ、おええっ」サイモン・クリスティは嘔吐のような声をもらした。
 
 ふたたび意識が遠のいていく前に女のつぶやく声が聞こえた。「よかったわ。あぶないところだった……」

 


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ぼっち

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