前のエピソード:
からだの大きさに見合わない黄色のリュックを背負ったレナと肩を並べて歩くソウマの二人。
「レナさん、その大きなリュック、何が入ってるんですか?」
「えへへ、気になる?」
「派手な黄色だからでしょうか、気になります」
ソウマの提案に乗ったレナ。二人はスムージーを飲むべく、近場のカフェを探し歩いていた。
「ひーみーつー」
「そうですか、ではきっと大事なものなのですね」
年相応の少女らしく可愛く振舞う殺し屋レナにフッと優しい笑顔で応えるソウマ。
一見、とても殺し屋を生業にしているようには見えないレナだが、ふと流し見たレナは目を細め、街中の様子を伺っているようにも見えた。
「いらっしゃい〜、ご注文は?」
カフェに入ると、若干馴れ馴れしい店員にスムージーを注文するソウマ。レナはブルーベリー味を選ぶ。
「この酸味が好きなの〜」
スムージーを受け取り、無邪気に笑うレナを見ながらソウマはお会計を済まし、席に着くが、何やら店内の様子に違和感を感じる。
「レナさん、何か……変な感じがしませんか?」
「ん? そう?」
気のせいだろうか、先ほどまで賑やかだった店内がひっそりと静まり帰っているように感じたソウマだが、レナがそう言うならきっと気のせいだろうと──。
「死にやがれぇ、このクソガキがぁ!」
ハンドガンを手にした店員の女性がレナに照準を当て、いまにも発砲されるかのように見えたその瞬間だった。
『サクッ』
数本のマイクロナイフが額に刺さり、どさっと鈍い音をたてながら床に倒れこむ店員の女性。
「レ、レナさんだいじょう──」
慌ててレナの方を振り向くと、彼女は涼しい顔でスムージーを飲み干したところだった。
「こんなに涼しい店内なのに、スムージーを受け取った時の彼女の手がねー、汗かいてたの……だーかーらー」
そう言って席に着くと同時にリュックからマイクロドローンを店内に飛ばし、モニタリングしながらいつでも対処できるようにしていたというレナ。
「レナさん、あなたはいったい……」
「さ、行きましょうソウマさん?」
「ど、どこへ?」
「私が面倒みますよって言ったでしょ?」
「え、それってどういう──」
「まずは!」
そう言って、ソウマの手を引き、騒然としている店内から逃げ出す二人。
「ソウマさん、遅い遅い! キャハハ!」
ソウマは一体に何に巻込まれてしまったのだろうか。笑顔ではしゃぐ少女の顔に、異常な殺しのスキル。走ると大きな黄色いリュックがガチャガチャと大きく上下する。
そんなアンバランスなレナを見て「まずは……破けたズボンをなんとかしないとですね」とお尻に隙間風を感じながら、ひとり呟いた。