第4話 私よりましじゃない

「免許、持ってたよね?」これで、ひとつの疑問は解決するかもしれない。彼女の本当の名前。


前のエピソード:

 無言のまま歩く僕とハナ。ショッピングモールからの帰り道、どちらの思惑も外れた気まずさからか、俯いたま、お互い自分の影を一歩一歩踏みしめる。

 この不可思議な状況にどう対処すればいいのか、何も思いつかない。確かに記憶とは曖昧なものではある。しかし、これは異常過ぎる事態だろう。

 まとまらない思考を必死に巡らせていると、ハナ──柳涼子を名乗る──にひとつ聞いてみたいことを思いついた。

「免許、持ってたよね?」

「うん? オートマ限定だけど、あるわ」

 これで、ひとつの疑問は解決するかもしれない。彼女の本当の名前。

「財布の中に……ほらっ、ってあれ……」

 取り出した免許証を見つめながら、ハナが泣きそうな顔をしている。

「ど、どうしたの? 見せてもらってもいい?」

 両目に涙を貯めたハナは、免許証を無言で差し出した。

「え……」

 まったく、今日は何回驚けばいいのだろうか? 次から次に不可思議なことが起こり過ぎて、次第にリアクションも薄味になってくる。

「ハナでも、涼子でも、ない……ね」

「私、どうしちゃったの? なんで? 誰なの私?」

 涙声で訴える彼女の怒りの矛先は、理不尽にも僕に突き刺さる。

「あっ」

 僕は慌てて、自分の身分証を確かめた。

「誰、これ?」

 そこには全く知らない名前が記載されていた。彼女だけではない、僕も何かの被害者なんだと、ハナに身分証を見せると、目を細め、小首をかしげる。

「し、知ってる名前だよ、これ!」

 身分証によると、僕の名前は小池聡。そして彼女は……。

「私のエミリー・ホワイトよりましじゃない。それと、私の知ってる小池聡くんは……」

 僕は今日、4度目の『驚きリアクション』を披露することになった。


このおはなしをシェアしませんか?

1 comment

感想をポチッ!(3つまで可)

萌え! 萌え!
0
萌え!
泣ける! 泣ける!
0
泣ける!
楽しい! 楽しい!
0
楽しい!
切ねぇ! 切ねぇ!
0
切ねぇ!
笑うわ! 笑うわ!
0
笑うわ!
好き! 好き!
1
好き!
怖すぎ! 怖すぎ!
1
怖すぎ!
神降臨! 神降臨!
0
神降臨!
南国アイス

日本との時差2時間の南国に住むアイス。 最近Webサービスを作ってみました。 https://t.co/amYDgswleG https://t.co/U4OqnQjZWt
>
%d人のブロガーが「いいね」をつけました。