第2話 白熱灯と驚きと

白熱灯がクラクラと揺らぐ中、風火が質屋の親父に手渡した文書とは・・・


「お……おめぇ、どこでこれを?」

風火が手渡したのは一片の布切れではあったが、上質な布紙と言うには程遠く、わら半紙かあるいは広告チラシの方がよほどしっかりしていた。

親父の声は、控室で待つほかのネズミたちをも沈黙させた。

なんせ、この親父が「ちゅー」から始まる言葉以外を吐くことなどなかったからだ。
親父はいつも、
「ちゅーっと、半端なもんもってきやがって、値付けはできないよ、嫌ならよそをあたんな。どこも買取りはしないよ。」
決まってそういうのだった。

そして、親父は、売主のその眉やヒゲの微妙な動きを察知して、また決まってもう一度、
「でも、うちなら買い取らねえこともねえな」
と言葉を続けるのだった。

チカチカとする白熱灯が、親父の言葉に信憑性をもたせた。
たいていの素人ネズミは引っかかる。
見え透いたチーズの罠みたいなもんだ。
それでも、奥の方には「唐代の一品」と書かれた古壺がありがたそうに飾られているもんだから、多くのネズミが餌食になったんだろう。

親父は老眼鏡をもう一度、バッターボックスに入る強打者のようにして掛け直し、風火の手渡した古布を読んだ。
「死不再生、窮鼠齧狸、匹夫奔万乗、舍人折弓、陳勝呉広是也・・・」

親父は、もう一度「窮鼠齧狸・・・」と蚊ほどの声量でつぶやいた。

そして、今度は、風火どころか、控室で査定を今か今かと待つネズミどもにすらも聞こえるような声で、繰り返したのだった。

「お……おめぇ、どこでこれを!」


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企業法務あたりを漂う若手弁護士。 匿名だからって過激なことは言わないけれど、実名で言いにくいことってあるよね。IT、サメ、西語、純文学が好き(ワナビ)。 note→https://t.co/5ZCzbt6hLT。 画像はアリムラモハ様(@mohamedo62)!許諾感謝!
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