第2話 塩をかけてもショッパイままだ

優樹くんと再会したその日の放課後、菜々美は理科実験室を訪れた。


前のエピソード:

「失礼します」

 私は理科準備室の扉を開けた。

 放課後、日が傾き始め、職員会議の終わった先生が帰って来るのを待ち構えていたのだ。わざわざ、隣の教室棟から見張ったりして。

「あら、いらっしゃい、菜々美ちゃん」

 先生はいつも通り柔らかく微笑んだ。私はいつも、この外面のいい笑みに委縮してしまうんだ。

「小林先生……その、私――」

「かっこよかったね、武田くん。ななちゃん、だってぇ。幼馴染だったんでしょう?」

 先生は私の言葉を遮る。薄らいだ氷の刃が背中を撫でた。

 先生の細くてしなやかな指が、シャツの上から私のお腹を撫でた。ねっとりと撫でまわした。

「もしかして、好き、だった。とか?」

「先生、私は……先生を裏切ろうだなんてこと。で、でもっ」

「でも?」

 先生が力いっぱい私のおっぱいを掴んだ。ブラの上から形がねじれる。

「いっ……いたい」

「でも、何?でも、武田君と仲良くお話していいですか?でも、武田君と思い出語りしていいですか?でも、武田君と。でも、武田君と。付き合いたい?キスしたい?エッチしたい?」

「そ、そんな……」

 先生の薄暗い瞳孔が私を呑み込む。

「初めて菜々美ちゃんが肌を許してくれた時、言ったよね。絶対に裏切らないことが条件だよって。女の子同士だもの、先生と生徒だもの。分かってくれてると思ったなァ……先生、思い出に負けちゃうのかなぁ?」

「……」

「ねえ、先生の質問に答えて」

 ボタンがひとつずつ外される。シャツのネクタイが床に落ちた。

「武田君、校門で誰かを待ってたよ?誰を待っていたのかな?」

 先生がすっと体を引いた。体に纏わりついた甘い香水。高校生が使うようなピンク色の明るい匂いじゃない。濃く沈んだ紫の、深く吸い込めばむせかえる匂い。

 私の動悸を掴んで離さない。

「もう下校時間よ?早く帰りなね。菜々美ちゃん、また明日」

 先生は何事もなかったように手を振った。

 いつもの、授業で見せる、優しい先生の表情があった。

 私のお腹にはくっきりと爪痕が残されて。

「し、失礼しましたッ」

 私はネクタイを掴んで校門へと走った。

 廊下を駆け抜けて、下駄箱を飛び出した先。校門にはもう誰の姿もなくって。

 慌てて校門から続く坂道を見下ろした。

 そこには優樹くんにべったりと腕を組んで歩く親友の香奈がいた。

 彼の困ったような、照れたような顔が、私をどこまでも切り付けた。

 ポケットのスマホが震える。着信に耳を当てる。

「菜々美ちゃん……今夜、時間ある?」

 振り返るとそこには、窓から見下ろす先生の微笑みがあった。


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いつまで経っても素人。最後の時は裸で仁王立ち希望。小説なんかを書いてます。
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