第1話 初恋はスイカの味

この世で最もありがちな恋愛ストーリーの冒頭を考えました。ご自由に続けてくださーい!


 わたしの初恋は、五歳のとき。

 お相手は、同い年の優樹くんだった。

 アパートの上の階に住んでいて、引っ込み思案のわたしを、よく公園に連れて行ってくれた。

 わたしが小学校に上がるタイミングで引っ越してしまったので、それっきり、いまはどうしているかも分からない。

 唯一の写真は、アパート前のコンクリートブロックに腰掛けて、仲良くスイカを食べているところ。

 淡い思い出だ。ずっとそう思っていた。

 高2の夏休みが明ける、その日までは。

*

 新学期、朝のホームルーム。

 生活リズムを立て直せないまま登校したわたしは、カバンを置くなり、机にほっぺたをくっつけて溶けた。

「ねえねえ、菜々美」

 話しかけてきたのは、親友の香奈。

 やる気なく少しだけ顔の角度を変えて見ると、香奈は頬をてかてかさせながら、こちらへ身を乗り出した。

「転校生が来るらしいよ! しかも超イケメンだって!」

「へえ。誰か見たの?」

「職員室で、小林先生と話してるところ見たって」

 小林先生はうちの担任なので、話が本当なら、そのイケメン君は、クラスメイトになるのかも知れない。

 けど、だからなんだ。

 わたしみたいな目立たない女子は、特に関わりもないだろうし、まあ、人口がひとり増えたくらいの感覚だろう。

 チャイムが鳴る。みんながガタガタといすに座ると、フレアスカートを揺らした小林先生が入ってきた。

 そしてその後ろについてきたのは、はかなげな印象の男の子だった。

 背は高く、色白で、清潔な黒髪。切れ長の垂れ目が印象的な、ちょっと浮世離れした感じの。

「やば! 超イケメン!」

「え? 芸能人?」

 女子が騒然とする中、転校生くんは教壇の前に立った。

「みなさんおはようございます。夏休み、元気に過ごしてましたか? きょうから仲間が増えますので、紹介しますね。武田くんです」

 穏やかな表情の武田くんは、ちょこっとお辞儀をしてから、口を開いた。

「はじめまして。武田優樹です。よろしくお願いしま――」

 ぐるっと見回した彼と、バッチリ目が合った。

 そして。

「……ななちゃん?」


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小野じゅん

ライトミステリーを書く人。花札廃人。和菓子を食べる職人。公募がメインですが、過去作はカクヨムに載せています。将来の夢はものしり博士です。
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