2×××年、春。
十五歳の僕は、晴れて、防衛軍・飛鳥隊に配属になった。
ピエロとしての才能を買われてのことである。
無論、僕の父がかつて本物のピエロに会い、一緒に跳んでいたことは、内緒だ。
我が国は三十年以上に渡って戦闘状態が続いており、空から陸から海から……いつ何時攻撃をけしかけられても対応できるよう、常に備えている。
なかでも飛鳥隊は、特別だ。
飛行センス、正確性、冷静さ、クレバーな判断力と、最前線で戦うために必要な全ての技能を求められる。
そして何より重視されているのは、『いざというとき、ためらいなく道化になれるか』。
あざわらわれても、罵られても、ピエロとして注意を引き、ピエロとしておとりになり、ピエロとして酔狂な戦術を取る。
面接官の先生方は僕を『君は、いとも簡単に全てのプライドを投げ捨てられそうだ』と評した。
そして僕はもちろん、『そんなものははなから持ち合わせておりません』と答えた。
――ピエロは笑わせる。ピエロは楽しませる。そして、ファニーなショーを披露する
いまは亡き、父の教えだ。いつも胸に刻んでいる。
*
晴れた日の朝。
飛鳥隊宿舎脇のガレージで、僕は、愛機・クレイン号の羽づくろいをしていた。
「クレイン、気持ちいいか?」
気持ちよさそうに首を伸ばし、滑らかな羽をわずかに震わせる。
飛鳥隊は、その名の通り、鳥に乗って飛ぶ。
大きめのゾウくらいのサイズ感の鳥の背中に、コックピットが取り付けられているのだ。
羽づくろいをするときはこれが取り外せるので、リラックスしたクレインを見ることができ……戦闘員としては良くない考えかもしれないけれど、可愛いなと思う。
「おーい、ミツキ!」
振り返ると、同期が手を振っていた。どうやら、朝食の時間らしい。
「じゃあね、クレイン。きょうは僕たちは飛ばない日だから。ゆっくりしていて」
そっと頭をなで、宿舎へ戻ろうとした、その時。
――緊急招集、緊急招集
けたたましいサイレンの音と、敷地内にいくつも設置された赤いランプが、異常事態を知らせていた。
いいわー、上手いわー