第2話 僕とハナとスズメ

なにかを思い出したかのようなハナだったが、事態はそんなレベルではなかった。


前のエピソード:

 ハナの手にしたバナナがべちゃりと床に衝突した。
白い果実は根元から折れて、黄色い皮から離別していく。

 僕はまだベッドに横たわったまま、彼女から見られないように股間をおさえた。
ナスにせよキュウリにせよ「似たような」形のものがダメージを受けるのを見るのは痛々しく感じるものだ。

「あっ……」

 もう一度、ハナが何かを思い出したかのように呆《ほう》とした声をあげた。
窓辺を向いている彼女の視線が、にわかに見開かれていく。

 つられた僕もそちらへ向くと、さっきからチュンチュンと鳴いていた小鳥たちが目に入った。
……正確には「小鳥」ではなかったのだが。

「な、なんだこれは……」

 思わずそう口にした僕の視界にはいま、窓枠からはみ出さんばかりに巨大なスズメの姿が映し出されていた。
茶色く丸々とした愛らしいフォルムはそのままに、サイズだけが異常にデカい。

「ち゛ゅん゛」

 距離が近いからなのか。
鳴き声が窓ガラスを揺らすほどの音圧を持っている。
さっきまでのチュンチュンという可愛らしさは、露ほども感じない。

「な、なによ……これ……」

 ハナが床に尻もちをついている。
無理もない。
僕だって生まれてからこの方、こんな異常な状況を目にするのは初めてだった。

 しばらくすると巨大スズメはこちらを向いて、小首をかしげる。
こういうところは普通のスズメと変わらない。
ちょっとほほえましい姿とすら思った。

 しかし次の瞬間、あのパンくずをついばむことくらいにしか使っていないようなスズメのくちばしが、工事現場の鉄球よろしく窓ガラスへと振り下ろされる。

 ガシャン!

 部屋中に広がる破壊音と共に、ガラスの飛沫が僕の身体に降り注ぐ。
反射的に身を丸くした僕の頭のうえを、巨大な質量を持った「なにか」が通り過ぎたように感じた。

 無論、この場合の可能性として「なにか」とはあの巨大スズメに他ならない。
案の定、顔をあげた僕の目には、ヤツの巨躯が飛び込んできた。

 考え得る最悪の形で。

「は、ハナ!」

 巨大スズメのくちばしが、気を失ったハナの身体をとらえている。

「う、うわああっ」

 ヤツは巨躯を左右に振り乱し、自分で割った窓ガラスから外へと逃げていった。
遠ざかるヤツの背中の影から見え隠れする、細いハナの肢体に、僕はやっとのことで意識を取り戻す。

「は、ハナっ」

 記憶を失っている彼女を、見たこともない巨大スズメが奪っていった。
いま僕の身には、一体なにが起こっているというのだろうか――。


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